- 旧帝大 修士卒(電気電子工学専攻)
- 電験一種に、10ヶ月で合格
- 気象予報士試験に、4ヶ月で合格
- ZOOM等でのオンライン個別指導(電験三種対策)の実績あり
令和3年(2021)電験三種理論の講評【合格基準点(ボーダー)の調整はある?】
講評
まずは、全体的な印象3点です。
- 例年より、やや難しい。
- 誤差率や直流安定化電源、コルピッツ発振回路など、過去問では見慣れない問題が多かった。
これまでの過去問演習による対策で十分対応できる問題も多かったが、過去問の丸暗記だけでは対応できない問題も少し出ました。
また、直流安定化電源の問題や誤差の問題など、問題文を短時間で的確に読み取るスキルの要求される問題も見られた。
ですが、過去問演習の積み重ねで解くことのできる問題も一定数あり、過去問演習を十分こなしていた方は、過去問の知識だけで6割以上は取ることができたのではないかと思います。
一方で、過去問や計算力の鍛錬が道半ばの方にとっては、かなり厳しい試験になったのではないかと思います。
合格基準点の調整はある?
直近の5年間でいうと、令和2年以外の年は合格基準点が55点に引き下げられています。
そして、上述した通り、今回の試験が難しめに感じたことから、今回も55点に引き下げられる可能性は十分あると思います。(責任は持てませんが💦)
自己採点の結果、点数が微妙だった方も、合格発表日まで希望を捨てないことと、落ちていた時のことも考えて、来年を見据えて少しずづ勉強をするのもよいと思います。
私自身も、電験一種二次試験のあとは、合格した手ごたえが薄かったので、来年に向けて勉強習慣を崩さずに勉強を継続しておりました。
A問題
問1



(ア)
$V=Ed$より、$E$は全領域で一定である。
そして、面S1、 S2の面積は同じなので、 それぞれを貫く電気力線の総数も同じである。
よって1倍
(イ)
$D=\varepsilon E$より、$D_{1}= \varepsilon_{r1}E $、 $D_{2}= \varepsilon_{r2}E $
よって、$\frac{D_{1}}{D_{2}}=\frac{ \varepsilon_{r1}E }{ \varepsilon_{r2}E }= \frac{ \varepsilon_{r1} }{ \varepsilon_{r2} } $
また、 面S1、 S2の面積は同じなので、 それぞれを貫く電束の総数も上記と同じである。
(ウ)
電束の総数は、コンデンサの電荷量と等しいため、Q
【答え:(1)】
問2

液体を満たすことで、静電力の向きは変わらない。
次に、クーロンの法則$F=\frac{1}{4\pi\varepsilon}\frac{Q_{1}Q_{2}}{r^2}$より
比誘電率2の液体で満たすことで、クーロン力は$\frac{1}{2}$の大きさとなる。
【答え:(3)】
問3

(ア)
強磁性体は比透磁率が高いため、磁束が通りやすい。
(イ)
磁界中に強磁性体を置くと、内部に磁束が通る。
(ウ)
強磁性体で回りを囲んで磁界の影響を及ぼさないようにすることを磁気遮へいという。
【答え:(4)】
問4


(ア)
コイルを貫く磁束の増加を妨げようとするので、右ねじの法則から、②の方向の電流が流れる。
(イ)
変化する磁束鎖交数は、$200×10×10^{-3}=2 \ \mathrm{ [Wb]}$
(ウ)
$V=-N\frac{\Delta \Phi}{\Delta t}$より
$200× \frac{10×10^{-3}}{0.5}=4\ \mathrm{ [V]} $
【答え:(4)】
問5

(ア)
熱電対の温度測定原理は、ゼーベック効果である。
(イ)
ゼーベック効果により発生する起電力を熱起電力という。
(ウ)
熱電対の接合点の温度の高い方を温接点という。
(エ)
熱電対の接合点の温度の低い方を冷接点という。
【答え:(1)】
問6


$t_{1}$以前では、抵抗が0.1Ωであり、電流100Aで10Vと計算でき、電圧は上限値を超えていない。
よって、100Aである。
$t_{1}~ t_{2}$のときは、 合成抵抗$0.1+0.1=0.2\ \mathrm{ [\Omega]} $なので、 電流100Aで20Vと計算でき、電圧は上限値を超えていない。
よって、100Aである。
$t_{2}$以降では、合成抵抗$0.1+0.1+0.8=1\ \mathrm{ [\Omega]} $ なので、電流100Aを流すと100Vとなって、電圧の上限値をオーバーし、定電圧モード(20V)に切り替わる。
このときの電流は、オームの法則より、$\frac{20}{1}=20\ \mathrm{ [A]} $となる。
【答え:(2)】
問7

すべての抵抗の合成抵抗は、$R+nr$となる。
オームの法則より、
$$I=\frac{nE}{R+nr}$$
可変抵抗で消費される電力$W$は
$$W=I^2 R= \frac{(nE)^2 R}{(R+nr)^2}$$
$$ = \frac{(nE)^2}{R+2nr+\frac{(nr)^2}{R}} $$
相加相乗平均の関係より、
$$R+\frac{(nr)^2}{R} \geqq 2 \sqrt{ R\frac{(nr)^2}{R} }=2nr $$
$$ (等号成立条件は、 R=\frac{(nr)^2}{R}\Leftrightarrow R=nr)$$
よって、電力が最大の時は、$R=nr$となることが分かったので、その際の電流は、
$$I=\frac{nE}{R+nr}= \frac{nE}{nr+nr} = \frac{E}{2r} $$
【答え:(4)】
問8


図2より、電圧の振幅は$100 \sqrt{2}$なので、電流の振幅は電圧振幅÷5Ωで $20 \sqrt{2}$ となる。
角周波数は、$2 \pi f =100 \pi$となる。
抵抗負荷のみのため、電流と電圧が同位相なことから、電流の初期位相も電圧と同じく$-\frac{\pi}{4}$である。
よって、
$$i= 20 \sqrt{2} \sin (100\pi t – \frac{\pi}{4}) $$
【答え:(5)】
問9

(a)
RLC直列共振回路において、LとCの端子間電圧はともに0ではない。
(LとCの直列合成後の電圧は、打ち消しあって0となる。)
よって問題文は誤り
(b)
RLC直列共振回路において、LとC には電流が流れるので、問題文は誤り
(c)
RLC直列回路においては、共振時はLC部の合成インピーダンスが0となり、電源電圧÷抵抗値の値が電源電流となる。
そして、RLC並列回路においても、共振時はLC並列部の合成インピーダンスが無限大となり、 電源電圧÷抵抗値の値が電源電流となる。
よって、両者の電源電流は等しくなることから、問題文は正しい。
【答え:(1)】
問10



RL回路において、スイッチ投入後から十分時間が経ったとき、コイルは導通とみなせる。
よって電流は、抵抗が倍になることで、半分の値に収束する。
また、RL回路の時定数は$\frac{L}{R}$なので、抵抗値が二倍になることで、時定数は半分の長さになる。
よって、例えば最終値の63%程度にまで達する時間が半分になっているものを選ぶと、4番が残る。
【答え:(4)】
問11

(1)
インジウムリンは化合物半導体で、シリコンは単元素の半導体なので、問題文は誤りである。
(2)
フィックの第一法則より、拡散電流は濃度勾配に比例する。よって問題文は正しい。
(3)
真性半導体に不純物を加えてキャリヤ濃度を変化させると、抵抗率や電気伝導度が変化する。よって問題文は誤り。
(4)
真性半導体に光を当てたり、熱を加えたりすると、電子や正孔が発生する場合があるので、問題文は誤り。
(5)
ドリフト電流は、電界の大きさに比例する。よって問題文は誤り。
【答え:(2)】
問12

電子が電界から受ける力は下向きで、$F_{E}=eE$
電子が磁界から受けるローレンツ力は上向きで、 $F_{B}= eBv =e\mu_{0}Hv$
電子は等速直線運動をしているので、上記の力は等しいことになる。
$$eE= e\mu_{0}Hv \Leftrightarrow v=\frac{E}{ \mu_{0}H }$$
【答え:(3)】
問13

電流源からの電流は二つの並列抵抗に流れ、その並列抵抗部の電圧は$v_{o}$であるので、
$$v_{o}=g_{m}v_{gs}×\frac{r_{d}R_{L}}{ r_{d}+R_{L}} \fallingdotseq g_{m}v_{gs}×\frac{r_{d}R_{L}}{ r_{d}}$$
$$= g_{m}v_{gs} R_{L} = g_{m}v_{i} R_{L} $$
$$\left| \frac{v_{o}}{v_{i}}\right|= \left| \frac{ g_{m}v_{i} R_{L} }{v_{i}} \right|= g_{m}R_{L} $$
【答え:(1)】
問14

誤差を無視した平衡条件は、
$$R_{1}R_{3}=R_{x}R_{2} \Leftrightarrow R_{x}=\frac{ R_{1}R_{3} }{R_{2}}$$
次に、誤差を加味して、平衡条件を書き直すと、
$$ R_{x}(1+\varepsilon_{x}) =\frac{ R_{1}(1+ 0.01)× R_{3}(1+0.02) }{R_{2}(1-0.01)}$$
$$= \frac{ 1.01 R_{1}× 1.02 R_{3} }{0.99 R_{2}} $$
最初の$ R_{x}=\frac{ R_{1}R_{3} }{R_{2}} $ の式を代入して計算すると、$ \varepsilon_{x}=0.04$となる。
【答え:(5)】
B問題
問15


(a)
電流計には、a相とc相の線電流をベクトル的に足し合わせた電流が、変成されたものが入力される。
平衡三相交流回路なので、それぞれの線電流の大きさは等しく、位相はそれぞれ120°づつずれているので、
a相とc相の線電流をベクトル的に足し合わせた後も、大きさは同じ10Aである。(もちろん位相は変わる)
変成比を加味すると、電流計に流れる電流は
$$10×\frac{5}{20}=2.5$$
(b)
まず抵抗値を求める。
抵抗一つあたりの消費電力は2kWなので、
$$2×10^3 = I^2 R = 10^2R \Leftrightarrow R=20 \ \mathrm{ [\Omega]} $$
よって、1相分にオームの法則を用いると
$$\frac{400}{\sqrt{3}}=10×\sqrt{R^2+X^2}$$
$$= 10×\sqrt{20^2+X^2} $$
$$\Leftrightarrow X=11.5$$
【答え:a(2)、b(1)】
問16



(a)
電流計における消費電力は、電流計の内部抵抗における消費電力なので、$I_{1}^2R_{a}$である。
(b)
負荷抵抗における真の電圧を$V$、真の電流を$I$とする。
負荷抵抗の消費電力の誤差率は、
$$\frac{V_{1}I_{1}-VI}{VI} ×100 \ \mathrm{ [\%]} $$
ここで、電流計は負荷抵抗と直列なので、計測電流と真の電流は等しくなる。($I_{1}=I$)
また、電流計内部抵抗と負荷抵抗の分圧の関係から、
$$V_{1}=\frac{320+4}{320}V$$
以上より、誤差率は1.2[%]となる。
【答え:a(4)、b(5)】
問17



(a)
コンデンサAでは、電束密度は全領域で一定。
$D=\varepsilon E$より、電界は誘電率に反比例するので、大小関係は下記の通り。
$$E_{A1}>E_{A2}>E_{A3}$$
次に、$E_{A1}$を求める。
$D=2\varepsilon_{0} E_{A1}= 3\varepsilon_{0} E_{A2} = 6\varepsilon_{0} E_{A3} $ より、
$$ E_{A2} = \frac{2}{3} E_{A1} 、 E_{A3} = \frac{2}{6} E_{A1} $$
$$∴V=\frac{d}{6} E_{A1} + \frac{d}{3} E_{A2} + \frac{d}{2} E_{A3} $$
$$= \left( \frac{d}{6} + \frac{2d}{9} + \frac{d}{6} \right) E_{A1} $$
$$= \frac{5d}{9} E_{A1} $$
よって、
$$ E_{A1} = \frac{9V}{5d}$$
(b)
コンデンサ内部の静電エネルギーをそれぞれ$U_{A1},U_{A2}, U_{A3},U_{B1}, U_{B2},U_{B3}$とする。
$u=\frac{1}{2} \varepsilon E^2$より
$$U_{A1}= \frac{1}{2} 2\varepsilon_{0} E_{A1} ^2 ×\frac{d}{6}S$$
$$U_{A2}= \frac{1}{2} 3\varepsilon_{0} \left( \frac{2}{3} E_{A1} \right) ^2 ×\frac{d}{3}S$$
$$U_{A3}= \frac{1}{2} 6\varepsilon_{0} \left(\frac{2}{6} E_{A1} \right) ^2 ×\frac{d}{2}S$$
$$U_{B1}= \frac{1}{2} 2\varepsilon_{0} \left(\frac{V}{d} \right) ^2 ×d\frac{S}{6} $$
$$U_{B2}= \frac{1}{2} 3\varepsilon_{0} \left(\frac{V}{d} \right) ^2 ×d\frac{S}{3} $$
$$U_{B3}= \frac{1}{2} 6\varepsilon_{0} \left(\frac{V}{d} \right) ^2 ×d\frac{S}{2} $$
よって、コンデンサAとBのエネルギーの比率は、
$$\frac{U_{A}}{U_{B}}=\frac{54}{65} \approx 0.83$$
【答え:a(4)、b(2)】
問18

(a)
ベース電位$V_{B}=9×\frac{3}{6.8+3}=2.76 \mathrm{ [V]} $
ベース電位から$V_{BE}=0.6 \mathrm{ [V]} $を引くと、2.16Vが1.4kΩの抵抗の両端電圧だとわかる。
よって、エミッタ電流は$I_{E}=\frac{2.16}{1.4×10^3} \mathrm{ [A]} $
コレクタ電流は、エミッタ電流ーベース電流で求まるが、ベース電流はエミッタ電流の100分の1しかないので無視できる。($I_{C}\approx I_{E}$)
$$V_{C}=9-I_{E}×2.1×10^3=5.76 \ \mathrm{ [V]} $$
(b)
コルピッツ発振回路の形を成している。
コルピッツ発振回路の発振条件は、直列共振条件と同じであり、以下となる。
$$2\pi f L=\frac{1}{2\pi f C} \Leftrightarrow f=\frac{1}{2\pi \sqrt{LC}}$$
二つのコンデンサの直列分の合成静電容量は0.5[μF]なので、
$$f_{0}=\frac{1}{2\pi \sqrt{5×0.5×10^{-12}}}=100 \ \mathrm{ [kHz]} $$
【答え:a(4)、b(4)】